2018.11.6

増収続くB2B―EC「P板.com」、成長維持する独自戦略とは?

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17年3月に東証マザーズに上場した(株)ピーバンドットコムは、電子機器に欠かせないプリント基板を自社で製造・販売し、毎年増収を続けているBtoB-EC企業だ。JAXAや日産自動車など、製品開発の最前線の現場から支持を受け、18年3月期の売上高は前期比9.0%増の19億9500万円となり、今期もさらに成長を加速させる。同社の戦略や今後の展望などについて田坂正樹社長に話を聞いた。

 

 

オーダーメイドのプリント基板をECで簡単に購入

 「プリント基板」とは、電子機器には欠かせない重要な部品。PCはもちろん、ウェアラブルデバイスなどの小型IoT機器からサーバ、医療機器、産業ロボット、自動車、航空機に至るまで、ありとあらゆる電子機器に使用されている基板だ。



※プリント基板本体(左)と、周辺部品を接続した基板

 

JAXAや日産もP板.comで基板を購入

 同社の運営する「P板.com」は、電子機器の開発などで必要となるプリント基板をオーダーメイドで注文できるECサイトだ。ユーザーは、購入したプリント基板の仕様情報を入力してオーダーすることができる仕組みになっている。

 

 「当社のお客さまの主な例としては、日産自動車などの自動車メーカーや、スター精密といった精密機器メーカー、工業系の教育機関などがあります。最近の特徴的なユーザー事例では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)にご利用いただきました」(田坂社長)    

 

 JAXAの事例では、宇宙飛行士による撮影の補助を行う宇宙船内ドローンの開発に要する基板がP板.comから調達したものだった。

 

 「JAXAのケースでは、国際宇宙ステーションの施設の1つである日本実験棟『きぼう』内にて宇宙飛行士の作業を撮影し、地上と宇宙の共同作業を確認する球体型の船内ドローン『Int-Ball(イントボール)』の開発に活用いただきました。『Int-Ball』の姿勢制御装置にファンを接続するための拡張基板は、『P板.com』で調達いただいたものです」(田坂社長)

 


※Int-Ballに組み込まれた基板
(写真の中央の基板がP板.comで製造したもの)

 

成長のヒケツは「ワンストップ・ソリューション」

 さまざまな属性のユーザーから厚い支持を受ける背景には、確かな品質と厳格な納期、そして同社が掲げる「ワンストップ・ソリューション」にある。

 

 「オーダーを受けた基板を販売するだけでなく、プリント基板を実装したい対象の設計・製造・実装までをサポートしており、ユーザーから高い評価を頂いています。筐体などといった周辺商品もラインアップしています。今後は、プリント基板を接続するケーブルなども取り扱いを開始する予定です。電子機器の開発を、一貫してサポートするサービスの拡充を進めています」(田坂社長)

 

 日産自動車の事例では、総合研究所の実験試作部が「P板.com」のヘビーユーザーになっているという。自動車開発のための実験・研究に要するプリント基板を「P板.com」で調達しているのだ。実際に「P板.com」を利用している日産の研究開発担当者は、「ほかの基板メーカーと比較してコスト面が秀でており、納品スピードの速さも大きな魅力」と絶賛している。さらに日産では、プリント基板本体のみならず周辺部品の調達や実装といった部分まで「P板.com」を活用しているという。研究開発のスピードを落とさないためにも、手間の削減は重要となる。そこでワンストップでサービスを提供する「P板.com」が大きく役立っているのだ。

 

6000億円規模のプリント基板市場を切り拓く

 

 創業にあたって、田坂社長は巨大なプリント基板の国内市場規模に目をつけ、プリント基板販売の現場のアナログさの改善によるシェア獲得にチャンスを見出した。

 

 「20代の頃にカタログBtoB通販企業で勤め、その当時からプリント基板の通販を手掛けていました。当時私が在籍していた企業では、プリント基板の通販事業から撤退したのですが、私はこの分野にビジネスチャンスがあると感じていました。
その企業の退職後、フリーランスでの経験などを経て、03年に『P板.com』を本格的にスタートさせました。電子機器の開発エンジニアが、何か試作品をつくるためにプリント基板を入手しようと思うと、出入りの業者に設計書を手渡して注文するなどかなり手間がかかるものでした。
ECを通じてブラウザ上で、仕様設計・注文・決済までを完結できれば、開発のための作業工数を劇的に減らすことができ、業務効率化・コスト削減につながるはずだと考えたのです」(田坂社長)

 

 「JPCAの統計によると、国内のプリント基板の市場規模は約6000億円に上ります。当社の18年3月期の売上高は19億9500万円。市場シェアにして0.3%。当社が市場に食い込んでいく余地はまだまだあります」(田坂社長)

 同社が成長を続けている理由には、現場に即した確かなマーケティングを実施したことにありそうだ。

 

 「設立当初は、小規模事業者の試作品開発のための需要をターゲットにしました。マーケティングの手法としては、開発エンジニアが読むような業界紙への純広告出稿・リスティング広告運用などでお客さまを獲得していきました。
CADソフトウェアの無料DLをフックにユーザー登録を促進、サンプル基板の送付やメルマガ配信で囲い込み、購買行動を促進していきました。設立から3年くらい、競合はいませんでした」(田坂社長)

 

「品質」「サービス」で差別化、セミナーによる囲い込みも奏功

 徐々に競合サイトも登場し、低価格訴求のプレーヤーも登場した。同社は、価格競争に巻き込まれないようサービスの質向上で差別化戦略をとった。

 

 「競合との差別化については、厳格な納期と高い品質のプリント基板提供によってカバーしました。サービス自体の質を向上させるためにも、オーダーメイドの基板販売だけでなく前工程・後工程までをカバーする『ワンストップ・ソリューション』の提供する方向に舵を切りました。この取り組みが奏功し、顧客満足度向上につながりました。お客さまの定着化が進み、現在は『P板.comをうまく使いこなしてコストダウンするために、エンジニア向けの研修セミナーを開いてくれないか』とお声がけいただくことも増えました」(田坂社長)

 

 同社では現在、個別企業に出張するセミナーのほか、CAD関連のセミナーも定期的に開催している。そのほか、関連業界の展示会への出展を通じた集客にも力を入れているという。

 

 「都内・市ヶ谷の本社近くに常設のセミナールームを持っています。週2回のペースでCADの解説や、機器開発効率化のコツなどをテーマにセミナーを開催しています。都内だけでなく大阪・名古屋でも定期的に開催しており、企業様からご要望があれば個別の出張セミナーも開催します。セミナーや展示会を通じた新規のユーザー登録数が伸長しており、売り上げも成長を続けられています。大企業では確立した資材購買フローがあるケースが少なくありません。今よりさらに、ここに食い込んでいければ大きな成長ができると考えています。業務効率化・コスト削減の観点からも当社が提供できる価値は大きいですから」(田坂社長)

 


※自社セミナールームでのセミナーの様子

 


今期売上高は20億円超へ、市場シェア10%獲得目指す

 同社は今期も順調に業績を伸ばしており、19年3月期は売上高20億円超に達する見通しだ。田坂社長は、サービス拡充を通じてさらなるシェア獲得を見据えている。


 「19年3月期の売上予想は前年比5.4%増の21億200万円を見込んでいます。お客さまの声を拾いながら、商品ラインアップの拡充やサービスの向上に取り組んでいきます。
例えば、今年の業界トピックとして電気・電子製品に使われる主要部品のひとつであるコンデンサの供給状況に変化があり、入手が困難となっているお客さまが一定数います。そのような切実な悩みを解決出来るようなサービスなども積極的に展開して、P板.comが開発過程において必要不可欠な存在となるようにしていきたいと考えています」(田坂社長)

 


※ピーバンドットコムの田坂正樹社長

 

 ユーザーのニーズを満たすため、さまざまな取り組みを実施してきた同社。今後も成長が続いていきそうだ。

(古川寛之)

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